sisters

 

 

 


欲しいものは何? って聞かれて、俺は即座に答えられない。

今俺が欲しいもの。
洗濯機の調子が悪い。って言ったら殴られた。痛ェよ初穂。
後はあれだ、新しいバイク?
気を使ってわざと高いもの言ってるの、って香穂。
そーじゃねーよ、ほんとにそれくらいしか思いつかねーんだって。
うん。いやマジでさ。バイク買ってくれる奴いたら一週間言うこと聞くわ、俺。
ちょっと、香穂が本気にするじゃない!
香穂、冗談だから。コラ、今貯金額がいくらあったか考えてるでしょ!
いやぁねはっちゃん、そんなこと思ってないわよ!
そうだな香穂、いいぜ…考えても。
わざと低い声で言うと、香穂が真っ赤になって爆発した。

こいつらはかわいい。からかい甲斐がありすぎる。
御神苗のバーカ、もう知らん! と初穂が言った。
ゲラゲラ笑って帰り道で二人と別れた。


そうだな。
そういえば俺は、

欲しいものはもう多分持ってるから。

だから別に平気なんだ。そうやって「何が欲しい?」なんて聞いてくれる奴が、いてくれるだけで。

わざわざ聞かなくたって、俺はもう持ってんだ。ありがとな。

 

次の日、朝早く宅急便が届いた。クール扱いだったから、多分食べ物だろう。
箱を開けてみると、少し斜めに傾いた、小振りのチョコレートケーキが入っていた。
カードを見ると、
「二人で焼いたから、ありがたく全部食べてね! 香穂&初穂より」
と書いてある。

俺は吹き出して、その傾いたケーキをしばらく眺め、ピサの斜塔…と思いながら冷蔵庫にしまった。

この大事なケーキを、誰と食べようか考えながら。

 

 

 

 

 

end

 

 

 


20110117
お誕生日ネタを出し損ねたまま今に至るその一。