君の欲望を知っている。
掌に意識を集める。何百回、何千回と繰り返してきたその動作。
一度も理想と違うものを生んだことはない。
帯電するフィラメント、
黒曜の粒子と白光が捩れて数列を成し、収束して掌の中心から生まれる金属の一叢。
美しく完璧なフォルム。
耀くような鋼鉄の銃口からこの世に生れ落ちてくる。凶暴かつ純粋な、破壊のためのロジック。
それは一体何のために生まれてくるのか、ずっと俺は知らなかった。
どうしてその力が俺に与えられたのか、何故俺だったのか。
何も知らずに。
ただ全てを壊すために。
でも本当は、違う答えがいつもそこにあったのかもしれない。
朝から降り続いた雨がまた強くなった。
屋根に落ちる雨音を聞いている。
俺はずっと待ち続けている。
もしかしたら、ずっとそうだったのかもしれない。きっと、出会う前から、君を。
最初に会った時のことを考える。
運命だとか、天啓だとか。そんなもの信じていなかった。
下らないおとぎ話だと思っていた。
でも現実にこんなことが起こるなら、案外この世はそう捨てたものではないのかもしれない。
早く会いたい。ずっとそれしか考えていない。まるでデートの待ち合わせみたいに。
これからすることを考えると、背筋に震えが走る。早く始まればいい。全て巻き込んで、嵐のように。
そして君が俺を待っていることも知っている。
同じ気持ちで、俺を待っていることも。
不思議だった。俺はずっと終わりを待っていたはずなのに。
ただ始まりが待ち遠しく、そして終わりは今思考から消えている。
今手の中には全てがある気がする。君にふさわしい力、君と闘うための。
何のために生まれて、何のために生きて、そして死んでいくのか、今ようやくわかった。
君に会うためだ。
全ての恋人たちがそう考えるように、俺もそう思っている。そのことに幸福すら覚える。眩暈がするほど。
出来ることならずっと一緒にいたい。永遠に、この世が終わるまで。
きっと君は、はにかむように笑う。
小さく咲き零れる花みたいに。
ずっと泥の中を這いずるように生きてきた。だからそんなに綺麗なものがあるなんて知らなかったんだ。
君を見つけるまでの永い永い間、どうやってここまで辿り着いたのか、俺はもう忘れそうになっている。
君のいない世界を。
でも俺は君を見つけて、恋に落ちた。
だからもう何も怖くない。
君と、闘うことしか考えられない。
それはきっと愛の行為だと思うから。
降り続いた雨が止んで、雲が晴れていく。
君は待っている。俺が来るのを。
未来も無く過去も無く、ただ今だけ、君は俺のものだ。きっと君も俺のことしか考えていないと確信できる。
俺は扉を開け、眩い光の中へ踏み出す。
もう一度君に会うために。