with pleasure
「どうして同じ条件下でこういう結果になるんだ?」
「……知るか……お前がアレなだけなんじゃねえの?」
「……わかりません……」
九子菜と竜座が熱を出した。二人ともぐったりしている。とりあえず世話が面倒なので、九子菜のベッドに二人とも放り込んだ。
昨日から急激に気温が下がった。そのせいだろうが、二人同時でなくてもいいのに、と九鬼は思う。
自分だけ仲間外れみたいだ、と唸ったら、九子菜が笑った。
「バーカ、お前まで倒れたら俺ら一網打尽だろーが」
「まあ、犯罪者の巣窟だからね、ここ……」
「そういえばそうでした……」
その犯罪者三分の二が苦しそうなので、仕方なく三分の一はいつものようにキッチンに立つ。
風邪メニューだとあまり作り甲斐がないが、これが九子菜の方だったらきっと途方に暮れていただろう。その姿を想像すると、おかしくて少し溜飲が下がった。
生活能力で言えば、間違いなく九鬼の方が上だ。別に初めからそう決まっていたわけでもないのに、いつの間にかそういう役割分担になっていた。
今ではすっかり馴染んでしまい、すでに他に手渡すわけには行かない職責のようなものを感じる。
放っておいたらダメだ。
竜座は気を使っていろいろ手伝ってくれるが、九子菜はとにかく気にしない。なのに食事の味一つ変わっただけでぶつくさ言う。
割に合わない気がするが、それも仕方ないのだ。きっと。
毎日の食事に少しずつ毒を混ぜたら、だんだん馴れて、毒を体が認識しなくなるんだよ。
一度そう言ってみたら、九子菜は真顔で「もう遅い」と言った。外で食事をすると、すぐに「あいつが作った方が美味い」と思うらしい。
プラスかマイナスかの方向性が違うだけで、やっていることは同じだと言う。
そうか、じゃあ今更だな、と返すとやっぱり真顔で「そう、今更」と言った。
竜座はあまり味覚にこだわりはなさそうだが、作ったものをとても美味しそうに食べる。彼も早く九子菜の二の舞になればいい。
出来上がった中華粥をよそって、九子菜の部屋へ持っていく。
ノックをせずに中に入ると、二人はくっつきあって眠っていた。多分九子菜が悪戯するのに抵抗したのだろう、竜座がなんとなく憔悴した寝顔をしている。
面白くて九鬼は少し吹き出した。
目が覚めたら、また二人は騒ぎ出すだろう。主に九子菜が。
あれが欲しい、これをしろとまるで王様みたいに要求する。隣で竜座はおろおろするんだろう。
二人に仕えるなら、文句はない。
他の誰でも嫌だが、この二人が言うなら何だって、
お気に召すまま。